動物園水族館の飼育員は、環境エンリッチメントを実施して動物福祉の向上を推進する

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動物園や水族館で暮らす飼育動物に対して、飼育員はいろいろな環境エンリッチメントを実行し続け、本来の行動を促進して動物福祉向上を推進して行くことが大切です。

では、この「環境エンリッチメント」とはいったい何なのでしょうか?

旭川市旭山動物園 公式HPより

環境エンリッチメンとは、動物福祉を向上するという考えから、動物園や水族館で暮らす野生種動物が、彼らそれぞれが本来持っている行動や習性を飼育施設内で発揮するための具体的な方策のことを言います。

飼育施設は自然環境下に比べて狭く、動物の行動が一定になりがちです。
そこで飼育員があの手この手でいろんな工夫を実施することで、本来行動を発揮してもらおうと努力することが必要です。

環境エンリッチメンとには大きく分けて5つの方法がありますが、どれも一度実施すればそれでいいということはなく、とにかくとにかく実施し続けるしかないのです。大変です…。

採食エンリッチメント

・餌の種類を増やす
・給餌方法を都度変更する
・餌を隠す
・給餌の回数を増やす
 
野生動物は餌を探して食べることに、とても多くの時間とエネルギーを使います。
飼育下では、飼育員の手間がかかるからという理由で、1日に1食だったり毎日同じ
メニューだったり…。野生の動物はこんなことないですよね?
 
生きて行くために食べ物を探してそして食べるという行動を、飼育施設内で十分に実施出来るように、飼育員は努力し続けなければなりません。

社会エンリッチメント

・群れを作る動物は群れで飼育する
・同じ地域に生息する動物を混在飼育する
・飼育員と健康管理の関わりを持つ

群れを作る動物を単独で飼育すると、大きな負のストレスを受けそれが続くと死亡してしまうこともあります。逆に、単独行動の動物を、複数飼育すると敵対心を持ち、闘争に至り傷ついてしまうことがあります。

動物にはそれぞれその動物の社会性がありますが、それを理解して動物種毎の特性を発揮できるよう、社会的な配慮が必要です。

また、野生種とは言え動物園動物ですので、飼育員との関りが不可欠です。
もちろんこの関りは、人為的に擬人化することとはまったく違います。

健康管理上必要な採血や採尿、体重測定や削蹄などに対して慣れてもらい、麻酔という負担をかけずに実施出来るハズバンダリ―トレーニングを進めることも重要です。

認知エンリッチメント

・動物本来の行動を発揮できる遊具やフィーダーを設置する

野生動物は野生下では、様々なものに触れたり活用したりします。
飼育施設内には、人工的であっても彼ら本来の行動を発揮できる遊具があれば、野生下で起こしている行動を発現出来ますね。

感覚エンリッチメント

・高い場所を作る
・他の動物の臭いを入れる
・他の個体の声などの音声を流す

床面に砂やウッドチップなどを敷き、野生下の環境に近づけることで体への負担の軽減に結び付きます。
自然環境下には、コンクリートのような平たくて硬い床はほとんどありません。

また、バランス感覚がよく高いところを活用するヤギやシカの仲間の施設には高い場所を設置すると、動物の心理的安定も強化されます。

シカの施設に時折オオカミの音声を流すことで、緊張感を持たせると言ったこともエンリッチメントとして非常に有効です。

空間エンリッチメント

・樹上のような登る場所を作る
・水場が必要な動物には池などを設置する

オランウータンのようにほぼ樹上で生活するような動物には、高いところにハンモックのような休息場所があればよいでしょう。
 
また、地中に巣穴を掘って生活するアナグマにとっては、床が土でそれを掘り巣穴を作れる状態がベターです。

このような環境エンリッチメントは、一度実施してしまえばそれで終わりではなく、ひたすら手を変え品を変えて、動物種それぞれに対して実施し続けることがとっても大切で、これが動物にとって住みやすい環境になって行きます。

飼育舎内で動物の行動が単一化することはすなわち負のストレスを増やすことになり、飼育個体に負担をかけてしまいます。

「動物福祉の向上」を推進するためには、具体的環境エンリッチメントの実践が不可欠なのです。

きりらび

野生動物の習性や行動はまだまだわからないことだらけ。

思い込みに捕らわれずに動物のことを知ろうとして、そして施設の改善を実行することが重要なんだね!

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