動物園の歴史は古く古代エジプトにさかのぼります。
その後中世ヨーロッパの王侯貴族が戦利品やコレクションとして奇獣珍獣を収集したことが広まったと言われています。ヨーロッパ各地には生息していないゾウやキリンなどのアフリカの生き物は当時相当に珍しく、一方飼育管理も整っていなかったことから
事故も多発していたようです。
お金にものを言わせて運び、自身の屋敷の庭の一区画を囲って、その中で動物を飼育し、王侯貴族に自慢していたようです。
1752年、オーストリア・ウィーンにある「シェーンブルン宮殿」に作られた動物園が
近代動物園の始まりと言われていますがあくまで見世物的な動物園でした。
1828年、ロンドン動物学協会がイギリス・ロンドンのリージェントパーク内に動物学に基づく科学的な動物園を開園したのが「ロンドン動物園」であり、ここがいわゆる「Zoo」の始まりであると言われています。
この時に使用された「Zoological Garden」が動物園を示すものとして一般化しました。
一方日本国内では、1882年に開園した上野動物園が最初で、その後園内に地元産魚類を中心にした「うをのぞき」が出来、これが国内初の水族館と考えられています。
その後約100年に渡り、世界の動物の姿形を見せる「形態展示」が主流となり、オリの中の動物を安全に観覧する施設展示が長らく続きました。
ヨーロッパにおいてはドイツのハーゲンベック動物園が1907年に、掘り込み式の無柵放養方式の展示を実施し展示革命を起こしました。
無柵施設は動物にとっても観覧者にとっても非常に効果的であり、欧米各地においてこの方式は一気に広まりましたが、日本においてその方式が取り入れられたのは1970年代に入ってからでした。
放飼場内部をその動物の生息地に合わせてディスプレイする「生態展示」が一時取り入れられましたが、擬岩や擬木などの人工造作物が非常に高額である一方で、
飼育動物がそれらを使用することは少なく、エンリッチメントにはならないことが多く見られました。
1997年、動物のあるがままの行動を発揮できるように改革したのが旭川市旭山動物園で実施された「行動展示」です。
動物種それぞれが持つ特性と習性を狭い施設内で存分に発揮できることが、その中で暮らす動物にとって何よりも良くそれを見る観客も種の特性を理解できる、革命的な展示方法です。
旭川市旭山動物園の本は数々出版されていますので、是非読んでみてください。
20世紀に入り世界各地では絶滅の危機にある動植物が激増し、7秒に1種が絶滅していると言われています。
動物園水族館は、世界各地で生息する動物を飼育しており、それらの生息域外保全に深く関わる活動を実施していますが、地球の環境劣化が加速する昨今において、この役割は今まで以上に重要不可欠になってきています。
そしてこの域外保全を強く進めるためには、飼育動物種毎の特性を十二分に発揮出来るよう、その種に合わせた動物福祉向上が必要であり、近年では「保全と動物福祉」を両輪として運営することが世界的に求められ、その傾向は強くなっていまする。
人間側がどう感じるかという「Animal rights」としての考え方ではなく、飼育動物にとってどうあるべきかを科学的エビデンスに基づき飼育状態を向上する「Animal Welfare」の考え方の基で、次代に伝えるべく飼育展示が求められて来ています。
世界各地で生息する動物多種を飼育展示し、彼らがそれぞれ持っている特性を遺憾なく発揮することで、観覧者はその環境へも発想が及びます。
地球の裏側の環境にも気付く場が動物園水族館であり、地球上に無くてはならない文化的教育施設としてその存在意義はとても大きいものと考えています。
「動物を見せる」ことから、「動物が自己意思で活動する」ことへ施設が変わってきている。
野生の動物は皆個性的。飼育員も個性的であれ。
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