動物園や水族館の飼育動物は、以前よりも種類が少なくなってきています。
例えば30年ほど前には、全国どこの水族館にも飼育展示していた「ラッコ」。
当時のラッコは、千島列島からアラスカにかけて生息している「アラスカラッコ」でした。
輸送料と個体本体のお金を支払えば、入手は比較的簡単に出来ました。
それだけ野生でも多く生息していたのでしょう。
導入した水族館ではその後しばらくは繁殖も順調で、国内の個体数が増えて行きました。
多くの水族館ではオス1頭メス2頭を入手したようです。
しかし親が高齢で死亡し、残った仔が大きくなってペアリングを行っても、一向にペアリングは成功せず、国内の個体数は減少して行きました。
現在(2020年7月)では、国内飼育頭数はオス3頭メス5頭の合計8頭のみです。
何が原因だったのでしょうか…。
実はこの謎は、ラッコの生態に解決のカギがあったのです。
北海道の東部に生息している「チシマラッコ」も、北アメリカの西海岸に生息する「カリフォルニアラッコ」も、そして国内で一世を風靡した「アラスカラッコ」も発情期以外には、オス・メスそれぞれ一定数の群れで生活しています。
メスは発情するとオスの群れの中に侵入し、相性が合う相手と交尾しますが、生まれた仔はメスの群れの中で育ちます。
育って行く過程で、オスの仔は成獣メスに対して交尾の練習をするのです。
この繁殖行動が非常に大切で、練習して交尾も上達するようで、これはピグミーチンパンジーでも見られる習性です。
飼育下で誕生したラッコは成獣になるまで、母親と一緒に生活しており、交尾を観察することも、それの練習をすることも出来なかったのです。
結果は繁殖活動が出来ない個体ばかりになり、次々と死亡してしまったのです。
アラスカラッコという動物の生態を知り、それに合わせた飼育管理を実施することが一番大切ですが、知らないことが多すぎて結果的には「命をつなぐ」ことが出来なかった1種です。
オスとメスを同居すれば繁殖する。
それも1年を通じてずっと…。
今はそんな管理を実施している動物園も水族館もないでしょう。
繁殖し自らの遺伝子を残すことが、野生生物の生きる目的であり、それを行うことが出来る飼育管理を推進する。
野生動物飼育施設である、動物園・水族館の重要な役割です。
野生動物のことはまだわかっていない・・・。
地球上で暮らす動物のことをもっと知ろう!
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